東京医科大学病院
栄養管理科 科長
栄養管理科 科長
宮澤靖
- ●1987年:北里大学保健衛生専門学院 栄養科 卒業
- ●1987年:JA長野厚生連 篠ノ井総合病院栄養科 入職
- ●1993年:エモリー大学医学部 臓器移植外科栄養・代謝サポートチーム 留学
- ●1994年:アメリカ静脈経腸栄養学会認定NSD(栄養サポート栄養士)取得 エモリー大学 クロンフォード・ロングホスピタル栄養サポートレジデント
- ●1995年:長野市民病院 中央診療部 栄養科 入職
- ●2000年:JA三重厚生連 鈴鹿中央総合病院栄養サポートチーム エグゼクティブディレクター
- ●2002年:医療法人近森会 入職 栄養科長
- ●2003年:近森会 栄養サポートチーム ディレクター
- ●2004年:日本静脈経腸栄養学会認定 NST専門栄養療法士取得
- ●2004年:徳島大学医学部大学院 後期博士課程入学
- ●2009年:社会医療法人近森会 臨床栄養部部長・栄養サポートセンター長・近森会NSTディレクター
- ●2019年:現職 東京医科大学病院栄養管理科 科長
1.はじめに
腸内フローラとは?
最近、注目度が高まっている腸内フローラとは一体どのようなものなのでしょうか。大腸には1000種類、100兆個という膨大な数の腸内細菌が生息しており、それらの細菌が種類ごとにテリトリーを持ち、密集して集団を作っている様子から腸内フローラ又は腸内細菌叢と呼ばれています。
競合、共生しながら集団を作る腸内細菌
腸内フローラを構成する100兆個の細菌の重さは合計すると約1.5㎏、仮に直径1マイクロメートルだとして1列に並べると、なんと地球2週半分の長さになります。これだけの数の菌が腸に集中しているのは、殆どの腸内細菌が偏性嫌気性菌で、酸素の少ない大腸が生育していくのに適しているためです。腸内細菌はお互いにテリトリー争いをして競合したり、協力し合ったりしながら集団を作っていますが、ビフィズス菌のように 長く定住する菌(定住菌)や2~3日で体外に排出される菌(通過菌)がおり、腸内フローラに生息する菌は常に入れ替わっています。そして、排出される菌もある一方、腸内に残った菌は増殖して勢力を広げるなど、日々、腸内フローラの細菌バランスは変化しています。 このように腸内細菌が競合、共生しながら集団を作り、人それぞれ異なる固有の腸内フローラが形成されているのです。昨今、この腸内フローラが人間の健康状態に大きな影響を与えている可能性が世界中の学者や医療関係者に注目されており、腸内フローラに関する様々な研究が進められています。